2013年6月26日水曜日

プロフェッショナル 欺瞞の流儀

……このようにロルカは周囲の誰もを虜にしてしまうようなカリスマの持主であったようだが、ただアルゼンチンの巨匠ボルヘスだけは彼のことをこう評している__「あれはマイナーな詩人ですよ。スペイン的色彩だけの。まあ、言ってみればプロのアンダルシア人ですね」……岩波文庫版『血の婚礼』あとがき

アルゼンチンジジイお得意の寸鉄皮肉によって所謂「プロ市民」レベルにまで貶められたロルカが可哀想な気もするが、英国式の教育を受けたり独裁政権時には冷や飯食わされたりで愛国心を涵養する機会など遂になかったジジイから見れば、故郷の風土を過剰に彩るロルカの振る舞いに嫌味の一つでもいいたくなるのだろう。

でもまあこういう「プロ」ってのはいつだって居るもので、中上健次だって、実のところは土建業を営む裕福な義父から結構な額の仕送りをもらいつつ新宿界隈でフーテン生活してたわけで、なんとなればジジイから「プロの紀州人」と言われても仕方ない。

そして問題なのは肉体労働に身をやつしたとき中上読みながら自己正当化を図った俺自身のことで、元々そういう性格なものだから、さいきん増えたインタビューの機会などでもついつい「プロ」的な発言をしてしまい、後悔するハメになる。

結局何が悪いって、作品と作者を分けて考えられない発想が一番悪い。